Thursday, November 3, 2016

君の名は。聖地・神岡町

岐阜県には大きな階段群はないと思っていたのですが、Google Mapsで適当に見ていたところ階段がいくつかあるところが出てきました。どこだろうここ。…神岡町?

というわけで高速バスに飛び乗って神岡町まで行ってきました。行こうかな、と思ったのがミスドでお茶をしていた14時、バスの出発時間が17時。

最初は電車で行こうかと思ったんだけど、高山までのバスが2時間40分と早いし往復で5140円なのでバスにしました。とりあえず出発の時間が遅いので高山までいって高山で宿泊。観光地なのでゲストハウスあるだろうなと思って探すといくつかでてきた中で、桜ゲストハウスというところが安かったのでそこにしました。

結果的にこの宿は正解でしたね。ドミトリータイプながら平日2600円という格安価格で、広い部屋に清潔なベッド、暖炉のあるダイニングとゲストハウスとしてはかなり完璧だった。難点は高山駅から20分ほど歩くというところだろうか。自分はそんくらい日常茶飯事なのだけど、キャリーバッグ持ってだとちょっときついかな。

翌朝は6時に起きて即準備をして高山駅6時40分発の神岡行きの濃飛バスに乗ります。最初はほとんど乗客がいなかったけど段々高校生が増えていく。このバスは終点が飛騨神岡高校で、そこまで行く学生が多いようだ。終点につくのは8時半近くだと思うが、となるとバスに2時間かかる通学か…大変だ(まあ大半は途中乗車ですが)

階段巡りを始めるにあたって濃飛バス神岡営業所を少し過ぎたところで下車してスタート。時間は8時過ぎだけど太陽が山に遮られまだ日が射していないので空気が冷たい。
下車したところにあった神社。君の名はの聖地らしい。


線路が見えますがすでに廃線となっている神岡鉄道跡。テレビで自転車とかバイクで走るようにしてるってのを見たことがあるな。昼間にバイクが走ってるのを見かけました。

神岡町における典型的な階段はこんな感じです。…あれ?めっちゃ都会っぽくない?そう、神岡町は「都市の住宅街の階段」的な階段群だったのです。これは非常に意外だった。山の中の階段群というと温泉街か寺町のどっちかだと思ってたのですが、神岡はどちらにも当てはまらない「鉱山の町」です。つまり工業化したあとの町なので比較的新しい。

しかも町の運営が上手く行っているのか、最盛期と比べれば人口も減ってるんだろうけどそれなりに商店が現役で稼働していていわゆる山中の寒村という雰囲気はまったくない。むしろけっこうな規模の街だ。ということで民家も築が浅い家が多いし、道路も新しい。

旧奥飛騨温泉口駅。ここが先ほどの自転車で線路を走る乗り物の出発地点。ちょっとおもしろそうだけど残念ながらその時間はない。

神岡中学校の下に何本も並行して走る階段のひとつ。街の作りも均整が取られ、計画性を感じさせます。

桜の季節だったら綺麗だろうなあ。

神岡城と町並み。

ところで神岡は穂高岳山荘の事務所がある場所です。なので穂高岳山荘は稜線にあるけど「岐阜の山小屋」なのです。北穂高小屋は松本市に事務所があるので「長野の山小屋」です。まあほとんど宿泊者には関係ないんですけど、ご飯に使われている材料が事務所のある県のものだったり、置いてある日本酒が県の地酒だったりしますね。

お昼ごはんはお弁当屋さんで弁当買って河原で食べました。日常生活好きな自分は特産品を使ったものより、そこの人が普通に食べてるお店が好きです。お弁当を食べたあと、川に向かってしばし黙祷。

ちなみにここで初めて知ったんですが、神岡町は君の名は。の聖地だったんですね。映画内で使われてるスポットが貼られてた。ただ、そのスポットが町内のどこにあるかは書かれていないのでこれを見た聖地巡礼者はモヤモヤするんじゃないかなあw 聖地巡礼マップ作ってあげて!

自分は君の名は。はまだ見てないんだけど、新海誠の作品はわりと見てます。彼はけっこうな作品で階段をモチーフに使いますよね。君の名は。の中でも重要なシーンとなる須賀神社の階段、糸守湖のモデルである諏訪湖の湖畔、そして糸守町のモデルである神岡町とどこも階段に縁があります。

神岡町は湧き水が豊富な場所で何箇所か「水屋」と呼ばれる湧き水スポットがあります。ここは権七水屋。飲んだ感じ硬水かな?違うかもしれませんが。

街はほんのり紅葉し始めてた。本番は11月10日頃かなあ。しかしこういう川沿いの無理くり建てた家ってなんか惹かれますよね。


Google Maps上で建物がいくつかあることだけ表示されていてアクセスする道路が一切かかれていない地区があったので行ってみると予想通り廃止された地区でした。ただ家庭菜園的なものがいくつかあったので、旧住人が今でも多少は利用している模様。でも街中ではほとんど廃墟は見当たらなかった。これも山中の集落としてはかなり珍しい。まあ集落っていう規模ではないけど。

街の北端に神岡鉱業の亜鉛製錬工場があります。日本の近代史、戦後史を語る上では避けられない企業の一つ。

そんなわけで駆け足で神岡町を巡ってきました。15時55分のバスで高山に戻った。神岡町はスーパーカミオカンデのある街なので天体物理学好きの自分としてはそれも気になるところだけど今回は道の駅 宙ドーム・神岡に行く時間なかったのが残念。次は桜の季節に行ってみたいですね。

Monday, October 10, 2016

長崎の階段

日本で最も広大な階段群は横浜〜横須賀の横横階段群ですが、圧倒的な密度という意味では長崎市も日本一の階段群と言っていいと思います。
長崎市はとにかくすべての住宅が斜面に建っているのでは?と思えるほど斜面だらけ。坂の街と呼ばれる街は全国に何箇所もありますが、群を抜いているといえます。

しかし長崎の階段を歩いているとひとつのことに気がつくと思います。それは「白線」の存在です。
長崎の階段はたいてい白線が引かれています。これは役所が行っているわけではなく、学校や自治体がボランティア活動として行っているようです。そしてかなり熱心に行われていて、すり減って見えなくなっている…というような階段はほとんどありません。どこも綺麗に書かれている。

この白線、人間の目にすごくキャッチーで歩いてるとものすごく目に入ってきます。階段の印象が白線に覆われていく。ある意味階段巡り殺しです。でも安全のためには仕方ありませんね。実際階段で滑って怪我をしたり、死亡事故になってしまう件数というのはかなり多いようです。この白線によって件数が減ったかどうかは定かではありませんが、夜でも目立つしある程度効果はあるのではないでしょうか。

あと手すりがこの白パイプなのも長崎の特徴です。白線と白パイプ、この二つが揃ってたらまず長崎と思って間違いない。

こちらは佐世保市ですが、白線と白パイプは同じですね。ただし自分の感覚では白線率が長崎市より低いように思います。佐世保の階段を巡っているときに地元の年配者にお話を伺ったのですが、あまりに階段=白線という感覚が強いので自宅の中の階段にも白線を引く方もいらっしゃるそうですw

長崎の階段の猫率はそこそこ。めちゃくちゃいるってわけでもないけど時折出会う。

しかしまだ長崎市の階段の1/3も巡ってないので、早くまた長崎に行きたいなー。

Thursday, September 8, 2016

「耳をすませば」聖地聖蹟桜ヶ丘階段の謎。


ジブリの「耳をすませば」といえばカントリーロードのノスタルジックな訳詞と、青春の恋模様を描いた名作です。どちらかというと女性に人気が高いように思うけど、自分もとても好きです。スピンオフである「猫の恩返し」も面白いですね。

ジブリ作品はモデルとなった街がどこそこだと話題になることが多いものの、確実にそこをモデルにしている、という映画はあまりないです。「千と千尋の神隠し」の九份や「魔女の宅急便」のストックホルムが参考にしているとは言われますが公式ではありません。

しかし耳すまはジブリにしては珍しく聖蹟桜ヶ丘で確定しています。いや公式に声明が出ているのかどうかは知らないけど、駅や風景等の現実の街並みをそのまま映像にしているので違うと言いようがないです。さらに京王百貨店のKEIOの文字がそのまま出ていますからね。京王がスポンサーになっているわけでもないようですが。今流行の新海誠は現実の街並みを使うアニメ映画として有名ですが、ジブリの中ではちょっと異色だといえます。

また、ジブリの他の映画はSF、ファンタジーなのか現実世界なのかがはっきりしていますが、耳すまはどちらとも言い切れないという意味でも特殊です。90%くらいは現実世界に基づいてるけど、冒頭の猫のくだりを考えるとファンタジーの世界だとも言えるし、不思議というより曖昧な世界観ですね。

前置きが長くなりましたが何が言いたいかというと耳すまはジブリ作品の中でも人気上位に位置する作品で、かつ実際の街がモデルになっていて、しかもそれが聖蹟桜ヶ丘という都心から近い場所なのでいわゆる「聖地巡り」の格好の対象になっています。聖蹟桜ヶ丘の街もまちぐるみでそれをプッシュしています。
聖蹟桜ヶ丘駅前の地球屋を模したポスト
さらには聖地巡り用のポスターまで配布してます。メインとなる聖地は図書館へと続くいろは坂の階段ですね。
いろは坂と階段。ただし映画内の構図とは違う。
他にも細かい聖地はいろいろあるのですが今回は聖地を紹介したいわけではないので割愛。今回お話したいのはこのシーンです。
左に「天守の丘」という石柱があるのがわかりますね。そして遠景は京王百貨店を見下ろしています。ところが実際にはこの風景は存在しません。なぜならこの二つは別々の風景だからです。

これが実際にある「天守台(関戸城跡)」の碑です。階段の両脇は森になっていて、見晴らしはよくありません。

これが聖蹟桜ヶ丘駅と天守台の碑の位置関係です。聖蹟桜ヶ丘は北側にありますが、天守台の階段は南向きに下っているので南北が正反対です。

こちらがいろは坂の途中から北側を見た風景。映画と少し向きが違いますが京王百貨店が見えます。天守の丘のシーンはこの二つを合成しているわけです。

それだけなら「へー」で終わりなんですが、ここで非常に興味深い事実があります。インスタグラムの #聖蹟桜ヶ丘 のタグを見ると今でもかなりの人が耳すまの聖地巡りの写真をあげているのですが、まったく違う謎の階段が聖地としてアップされているのです。それが以下の階段です。

上の位置関係図からわかる通り、この階段は天守の丘の碑もないし駅との向きも違う、耳すまに一度も出てこないまったく関係ない階段です。ところが驚くべきことに耳すま聖地に行った人はかなりの高確率でこの階段を聖地として写真を撮り、他にいくつも写真を撮ったであろう中からここを一番の聖地として選択しているのです。なんなら、インスタの10万枚の #階段 タグのなかでもこの階段の数はかなり上位に入ってくるくらいの勢いです。

いったいなぜそんなことになるのか。いくつか理由はあると思いますが聖蹟桜ヶ丘駅から地球屋のモデルとなったロータリーがある場所までいろは坂を登って道沿いに歩いてくると、その間には高台から駅側を見渡す開いた場所ってないんですよ。そしてこの階段はロータリーの手前にあり必ず通ることになるので、ここで開けた風景を見て「あ、ここが雫が階段を駆け下りるシーンだ!」と勘違いしてしまうのではないでしょうか。

しかし実際、この階段の上から見渡す風景は素晴らしいです。耳すまを抜きにしても、多摩丘陵のたおやかな斜面と平穏な街並みに溶け込んだ階段に思わず頬ずりしたくなるほどです。これから聖蹟桜ヶ丘に聖地巡りに行く人がこの記事を読んで、聖地と間違えないようにしたうえで「この階段もいい風景だね」と思ってくれたらと思います。
ロータリーにある洋菓子店にはバロンがいるよ

Saturday, January 9, 2016

階段ロゲイニング

階段ロゲイニングというスポーツをご存知だろうか。地図とコンパスを片手に野山を走り回ってチェックポイントを通過し早さを競うロゲイニングというスポーツがあるが、階オリは簡単に言えばそれの階段版である。
まず主催者が地図を用意し、地図には階段の位置がプロットされている。あとはこの階段を全て回ればいい。細かいルールやテクニックとしては以下のものがある。

階段は必ずしも上り下りする必要はないが、上からと下から撮った写真が必要である。長い階段は行きしに上からと撮り、戻り道で下から撮る、というテクニックを覚えよう。
(回り込むように移動することで中央の階段を登ることなく上からと下からの撮影に成功している)

次のチェックポイントまでの最短距離だけではなく、次の次、全体での距離を考える必要があり、地図から高低差を読み取っていく頭脳ゲームでもある。
なお地図は地形図ではないのでこのような地図があったときどこが谷でどこが尾根筋なのかを見極める必要がある。例えば学校は丘の上にあることが多いのでそこに登っていく坂だな、という予想が立てられる。

また、地図上では道になっていたのに私道だったり工事などで通行できず、その場で変更を迫られることも多い。緻密な計画を立てていたとき一つの道が通れないだけで全体の経路を見直す必要があることもあり、計画の柔軟性も求められる。

もちろん街中の路上で行われるスポーツなので順位や時間にこだわらず安全重視で楽しむことが大切である。

※当記事は当初「階段オリエンテーリング」というタイトルでしたが回る順番が決まっていないことがオリエンテーリングではなくロゲイニングであることがわかったので記載を変更しました。関係者に陳謝しお詫び申し上げます。