Monday, July 27, 2020

10年ぶり?に登場した水窪、池の平に行った話。

前日譚

朝日を浴びる池の平

みなさん水窪って場所をご存知でしょうか。今は静岡県浜松市天竜区になっていますが大都会浜松駅より車で2時間弱、電車で行こうものなら豊橋経由で飯田線にのってたっぷり3時間はかかろうかというかなり辺p…山間の街です。全国的な知名度は低めですが最近だと大河ドラマ「おんな城主直虎」の舞台高根城がある場所ということで注目を集めました。あと、中央構造線上にあるので地形好きにも見逃せない場所です。

俺は故あって今までに水窪を2度訪れたことがあり、どちらのときも大変楽しい時間を過ごせたのでとても好きな街なんですが、前から再訪したいと思う理由がありました。それが今回お伝えする池の平です。

池の平というのは地名でもあるんですが、より具体的には「7年に1度山中に池が現れる」という現象を指す言葉でもあります。これは遠州七不思議の一つに数えられ、伝説的な謂れが多い中で実際の現象を伴う珍しい怪異とも言えます。

前回の登場が2010年(または2011年)であり、7年に1度ということから言えば次は2017年(ないしは2018年)ということになりますがどうも近年は間隔がずれており既に7年を過ぎているが現れたという話が一向に聞こえてこない。

そのため、現れるのはだいたい夏前後ということなので毎年春になるとTwitterで情報提供を呼びかけていました。(あとGoogle Alertで「水窪 池の平」という情報が新たに出ると通知されるようにしてる)

それでも特に進展がないまま数年経ってたのですが、今年ちょっと目新しい情報が出てきました。それはデイリーポータルZで紹介された以下のブログです。


これは2010年のときの話ですが、今までのネット上の情報のように曖昧な書き方をせず、非常に具体的かつ詳細なレポートがされている。

このブログ記事をツイートで紹介しました。

そうしたところ2020年07月15日(水)にとある方からTwitterにDMで「本日池の平に行ってきました(池があった)」とご報告を頂きました。どうやらその方は上記のレポートを読み、そこからある推測を行い、「今池の平は出ているのでは?」と予想し、行ったところ実際に出ていたということのようです。自分としては人の報告を待ってから現地に向かうということしか考えていなかったので、遠隔で登場を予想する手段があるとはまったく予想外でした。

そしてその方によるとその時点で満水で深さは背丈ほどということでした。過去の記録によると1日20センチほどで減少していくということなので1週間は持つのではないか、と考えました。個人的な事情で今年は有給が残り少ないのでなるべくなら平日に休まず土日で行きたかったんですよね。このペースなら土日でも間に合いそう(ついでに木金と雨が降りそうなので、それで減少ペースが鈍化する期待もあった)なので週末に行くことにしました。

交通手段

車を持たない俺は水窪まで電車でいくしかない。関東からだと新幹線で豊橋まで行き、そこで飯田線に乗り換えます。少し前の豪雨で飯田線に不通区間が発生しているんですが水窪までは各停がある(特急は運休中)ので水窪の一つ手前の向市場駅まで行きます。

なお2020年7月27日現在でも飯田線の水窪〜平岡間は運休中であり、復旧は夏以降になる見込みです。

かつ水窪と浜松を結ぶ主要道路である国道152号線も土砂崩れの影響で片側通行になっている区間があり、時間によっては50分待ちになる場合もあります。
帰りにフォロワーと合流し乗せてもらった車内より

これらの状況は後で述べる予想と関係してきます。

登山道

メインの登山道は水窪橋の交差点から後河内川沿いの林道を少し登った先になります。

ここまでは林道は激狭いということはないですが広くもないので路上駐車はできないと思ったほうが良いです。近くだと水窪総合体育館の駐車場が広いように思いますが使えるのか確認はしてません。車で行く人は林道に入らず手前で駐車スペース探したほうが良いと思います。住民の邪魔にならないようご注意ください。

登山口

登山口にははっきりとした看板が建てられているので見逃すことはないでしょう。これから先の道は山に生きる会の方々が整備されているようですが、遊歩道ではないので登山の準備が必要です。また、俺は機材を色々持っていったこともあって荷物がかなり重かったんですが、到着にきっちり2時間以上かかりました。荷物少なくても山道に慣れてないなら2時間〜2時間半は見ておいたほうが良いです。なるべくならここの登山ノートに記入しておきましょう(といいつつ鉛筆を持ってなくて俺は記入しませんでした)。

ヤマビルとの戦い

友人の足に食いつくヤマビル

そしてこの登山道は異様にヤマビルが多いです。関東だと丹沢山系なんかでヤマビルが多いことで有名ですが、そこの数倍はいる感じがします。ヤマビルって元気だとゆっくりうねうねではなく素早くぴょんぴょんと飛び移ってくるんですよ。

ヤマビルがいるという情報はもらっていたのでヤマビル忌避剤は買っていきました。これはかなり効きます。靴にかけておくと登ってきても途中で落ちていきます。ただそれでもものすごく数が多いので、一度二度はやられる覚悟をしておいてください。俺は気づかないうちに腰に張り付いていたようで下山後に見たら腰が血まみれになっていました。

なおヤマビルに吸われても基本的には血がしばらくたらたら流れるという以外は大きなトラブルはありません。しかしどうしてもヤマビルにやられたくない、触りたくない、という場合は池の平を諦めたほうがいいでしょう。池の平を見なくても死にませんし。

ところでヤマビル忌避剤の主要成分はディートのようです。ディートと言えば通常の虫除けスプレーの成分でもある。どうやら濃度が違うようですが、もし専用のヤマビル忌避剤の購入ができなかったらディート入りの虫除けスプレーでも代用は可能だと思われます。あと水窪橋にある水窪路の里というお土産屋でもディート不使用のヤマビル忌避剤を販売していました。

携帯の電波

俺はドコモ回線の楽天モバイルユーザーですが、池の平峠近くまでは微弱ながら4Gが入りました。峠を越えてちょっとの間は3Gが入りましたが、池の平周辺では繋がらなかった。auは可能性ありますがSoftbankは難しいと思ったほうが良いでしょう。必要な連絡は林道に入る前に済ませておくことをおすすめします。

池の平との出会い

奥に新池が見えている

汗をダラダラ流しながら峠を越えたらあと少しです。座って休憩したいがヤマビルのことを考えると座れない、という矛盾。峠から10分ちょっと下ると池の平の看板があります。(池が出ていれば)看板の奥に池が見えるはずです。

上記水窪観光協会のサイトにある概略図を見ると、池が新池と元池に分かれているのが見えると思います。この看板が出ている場所は新池にあたります。新池がいつから出るようになったのか、といったことはわかりませんが、実は元池のほうがかなり規模が大きいです。

元池

池の平 元池

新池の看板から5分ほど下ったところに元池があります。元池のほうは規模が大きく、深さもかなりある。中心の水深は自分が見たときで2m以上はあったのではないかと思います。しかし実を言うとというか、池の平周辺の山は杉の植林が営まれている人工林です。そして元池のほうがなんとなく「人工ぽさ」が強いんですよね。なので新池が先に消えていたとかせっかくなのでってことであれば元池も見ると良いですが、もし元池の方を見忘れたってことでも新池を見てれば悔しがることはないかと思います。

なお俺のライフワークである日本山岳水泳協会の活動のため水着を持っていって入ったんですが、水温はほどほどで激冷たいってことはなかったです。1分くらいなら平気。ヤマビル対策のためきちんと脱衣用のシートもサンダルも持っていきました。完璧。

ドローン(Mavic mini)を持っていって撮影しました。池の平をドローンで撮ったのはもしかしてこれが初めてかもしれませんね。しかし森の中でGPS信号が捕まらず、Mavic miniは近接センサーがついてないため流されて木に激突しあえなく水没させてしまいましたw 池の平にドローンを水没させたのも俺が初めてかもしれません。なんとか回収できたので保険で交換する予定です。水着持っていってよかった。

新池



新池がいつから現れたのかはわかりません。しかし新池はシダが多く沈んでいて、自然林ぽく見えるんですよね。Twitterで「もののけ姫っぽい」というリプライを多くもらいましたが、そういう雰囲気は断然新池のほうです。ただ新池は少し浅い上に西側に出口があって、これ以上水が増えたとしてもそこから流れ出ていってしまいます。そのためおそらくはいつも新池のほうが先に消えるのではないかと思います。

発生のメカニズム

さて池があることは実際に確認できたわけですが、どうして池の平は現れるのでしょうか。前述の週末大冒険のサイト含め、いくつかのサイトで検討されているが共通である予想は「雨水か湧き水である」という予想だ。これはまあ当然で、山の上にあって川が流れてないのだから水の由来は雨以外にない。あとは雨が直接溜まったのか、一度地中に潜ってそれが湧き出てくるのかってことでしょう。

ここで実は観光協会に電話した時に少し興味深いことを聞いたのでお伝えします。地主の方曰く「本来の池の平は雨に関係なく湧いてくるもの、雨水が溜まるってことはままある」らしい。その言葉を鵜呑みにするなら、今回の池の平は明らかに雨水が直接溜まったもので湧き水ではない。

しかし水がいきなり地中に発生するわけもないので水が雨によることは間違いない。となると、以下の図のようなことが考えられないでしょうか。


普段は雨が降っても土中に浸透していくため池は発生しません。
しかしかなりの雨が降ると浸透力を越えるため水が表層に溢れ池が発生します。これが今回の発生です①。
そして染み込んだ大量の雨水はしばらく経ってから下に湧いてくるため「雨が降ってないのに池が出現」します。これが本来の池の平です②。
ネット上の情報でも「降雨後一月ほど経ってから現れる」という記述を見ることができ、この考えと一致します。

では7年に一度、という間隔についてはどう考えるべきでしょうか。この点に関して俺は週末大冒険の意見と同じく「民俗学的な伝承である」という立場です。実は以前から「本当は雨が降ったら出てるけど、誰も見に行ってないのでは?」という予想はしていました。そして実際いってみて、現地は杉林の人工林とはいえ常時人が立ち入るような場所ではないことが確認できました。人気の登山ルートではないし、ましてや雨が降ったら誰も近寄らないでしょう。数日間以上1人も入山しないときなんてザラにあるはずです。となれば、出現したとしても気が付かれないという可能性は高いでしょう。

もちろんこれは俺が勝手に考えたずぶの素人の根拠のない意見であり、絶対これが正しいと主張するつもりは毛頭ありません。ただ、ウェブにある情報や今回現地でみた環境を考慮すると、そういったことも考えられるのではないか、という話です。

今後の発生予測

さて以上のことを踏まえますと、実は2020年7月27日(月)現在、再出現している可能性もあると思っています。なぜなら7月25日、26日と水窪ではかなりの降雨があり、それによってまだ乾ききっていなかった土壌から水が溢れているのではないか、と考えられるからです。

そしてもう一つ、たっぷりと水を吸った山は今後一ヶ月かけて濾過し水を吐き出します。それが十分な量であれば、8月中旬〜下旬にかけて真・池の平が登場するかもしれません。

現地へ向かうときの注意事項

池の平自体の話は以上なんですが、向かう時に注意してほしいこと、お願いがいくつかあります。

まず今年に関しては新型コロナウイルスの感染予防の観点から現地では数少ない飲食店が営業自粛、または短縮しています。観光協会も公式に案内はしていません。そのため、必要な準備は地元で揃えてから行くほうが良いでしょう。

そしてとても大事なことですが、飯田線に運休区間があったり国道152号線が土砂崩れを起こしているように、池の平が現れるということは豪雨のあとであって、山も道が緩んでいるということです。自分が歩いたときも崩れかけている箇所がいくつもありました。あの後も雨が続いたことを考えるとさらに崩れている可能性もあります。登山経験がない人が向かうにはハードルが高く、ましてや単独で入るのはかなり危険であると思ってください。3000mのアルプスより、ひと気のない低山のほうが遭難リスクは高いです。滑り落ちても誰も通らないし、携帯は繋がらないかもしれません。
こんな箇所がいくつもあります

注)2020年7月26日の大雨では水窪地域に土砂災害の警戒レベル3が発令され、2020年7月27日現在も警戒レベル2が継続しています。

個人的には今すぐ向かうより、状況が諸々整うと考えて一ヶ月後の登場を期待するほうをおすすめします。


そして水窪という街自体とても良い場所なので、街の雰囲気も楽しんでもらえたらと思います。

なお朝は山で日が遮られているのでモヤに日が差し込むのは少し日が昇ってからです。明るくなってから登り始めても十分モヤに間に合うと思います。

<追記> 池の平の未来

Google Mapsの衛星写真で見るとわかるんですが、池の平の北側にあるボンガ塚という山と南側の方に林道が伸びています。

実は何年か前にこの南側の林道を友人の車で行けるところまで行ったことがあるんですが、舗装したかなり立派な林道を作っていました。この感じからするとどうも北の林道と南の林道をつなげるつもりなんじゃないかなって気がします。もしそうなれば確実に池の平のそばを通ることになり、池の平へのアクセスは簡易になるでしょう。そうなったら「行くのが困難な幻の池」ではなくなるし、もしかしたら毎年池が出るときがあるって判明することになるかもしれません。

そうなったとしたらそれはそれで受け入れるしかないわけですが、俺としては幻と言われるうちに見ておきたかった、という気持ちもありました。なので、また池の平を見に行くことはあるかもしれませんが、幻を追いかけた日々は終わった、という気持ちです。

Thursday, October 11, 2018

2018-10-14 品川階段ミート

こんにちは、お久しぶりです。
暑い夏が過ぎ台風も過ぎ去ったところで寒い冬が来る前に階段ミートを行いたいと思います。
今回の舞台は東京都品川。
区で言えば港区が中心になります。
名前のある坂が多く全体的に雰囲気のある文京区の階段と比べると、実は港区の階段は住宅と住宅の間にひっそりと隠れるようになっていて非常に味わい深い。
高輪、白金のある土地だから階段も高級感あふれるかといえばさにあらず。
まあ港区の階段を全部見ていると非常に大変なので今回は自分がピックアップした品川駅から近くにある階段の中でも特に素敵な階段をざっと巡って港区の階段を味わってもらいたいと思います。
時間としては2〜3時間程度。
終了後は懇親会も予定しています。
ぜひ奮ってご参加ください。

日時 2018年10月14日(日)13時集合〜16時解散(予定)
集合場所 品川駅東口つばめグリル品川駅前店前
参加表明 なくてもかまいませんがTwitterやらインスタやらメールなどでご連絡いただけると、ああ来ていただけるんだな、って安心します。
Twitter @kaidanmeguri
Instagram kaidanmeguri
mailto:syntaxsystem+kaidan@gmail.com
集合に遅れそうというときも上記のどれかに連絡ください。

天候 小雨決行


Monday, May 28, 2018

長崎、ドンドン坂の謎の考察(未解決)

長崎は坂が多すぎるゆえに東京と比べると名前を持つ坂は逆に少ない。自分はあまり名前にこだわらないので正確なところはリサーチしていないが、たぶんあっても数十くらいだろう。

東京は長崎と比べると坂は大人しいし少ないが、名前を持つ坂は800以上あると言われている。(坂には行政上の正式な名前というものはなくあくまで通称なので同じ場所でも複数の名前があったり、資料によって場所がずれていたりすることがあるので正確な数は数えられない)

長崎の坂で最も有名なのはおそらく東山手にあるオランダ坂だろう。オランダ坂は日本三大がっかり名所に数えられることもあるが、石の坂と木造建築の組み合わせは非常に美しく、ここを見てがっかりする気持ちがまったくわからない。歴史があるだけでなく、とても美しい坂だ。

そしてこのオランダ坂から少し離れた南山手にドンドン坂という坂がある。こちらもオランダ坂ほどではないが知名度はそこそこ高い。

まあ立地的にも見た目としてもオランダ坂に比べると少し地味なドンドン坂であるが、その名前の由来は「雨のときに水がドンドン流れるから」というのが定説である。

ほうほうと納得しそうになるが、「ドンドン流れる」というのはいかなる状況だろうか。ドンドンを「次から次へ」と解釈すれば意味は通るが、雨の時に水が側溝を次から次へと流れるのは当たり前でわざわざそんな名前をつけるとは思いにくい。そうすると次に出てくるのは擬音語としての解釈だが、流れる水がドンドンと鳴るということは果たしてあるだろうか。

ということは以前から少し考えていたのだが、今回長崎を巡っているときに何度か雨に会い、そのとき坂道で面白い音を聞いた。以下の動画を見てもらいたい。


側溝から見事にドンドンと太鼓のような音が聞こえてくる。しかし運が悪いことにこの側溝はメッシュの蓋がされていて中をみることができず、何が起きているのか確認できない。そこでふと去年群馬県の伊香保温泉に登ったとき(そう、登ったのである)林道で見た側溝を思い出した。たまたま録画していた映像が次である。



これは流れてきた水が段差によって波状になり、下っていく様子だ。上の動画ほどではないがドクンドクンという脈動のような音が聞こえる。おそらく上の側溝の中でもこのような波が発生し、ぶつかって、ドンドン鳴っているのではないだろうか。

さて問題はドンドン坂でこのような波が発生しうるのか、というところである。残念ながら今回自分がドンドン坂を通ったとき雨は降っていたもののあまり強い雨ではなく、水量はさほど多くなかった。しかし面白いことに気がついた。

先のドンドン坂の写真では側溝は普通の形をしているが、上部ではV字状になっているのである。これは三角溝と呼ばれる長崎独自の工法で、排水性を高める目的があるという。もしかするとこの形状の変化するところで波が作られているとは考えられないだろうか。しかもドンドン坂の上にあるつくる邸の方に聞いたところによるとドンドン坂はV字、U字、コの字と3段階になっているそうだ。上の変化で波が作られ、次の変化にぶつかって音が出る、と考えると辻褄が合う。

あくまでこれは推測であり実際のところは不明である。ただ、側溝を流れる水がドンドンと音をたてるというのは比喩ではなく実際にあり得ることだということはわかっていただけたのではないだろうか。

なおドンドン坂の石畳は斜めになっているが、これも水が流れやすいようにする工夫だそうだ。長崎は、雨とともにある土地なのだ。

次回も雨と長崎と坂の関係について書こうと思う。

高島の三角溝。三角溝といえばこれが最も有名のようだ。

Sunday, May 20, 2018

長崎市の銭湯巡り 2018年版

今年のGWは10日間長崎にいて、毎日階段を巡っていました。毎日それぞれの場所で発見があったんですが長期間の階段巡りを時系列で記録にするより、テーマで分けて書いたほうが読みやすいかと思ったので今回はそういう書き方にします。で、初回は「銭湯」について。え?階段じゃないって?

このブログやインスタグラムではあまり銭湯のことを書きませんが俺は数年前からめっきり銭湯にはまってしまい、階段巡りをしたあとはできるだけ銭湯に寄ることにしています。全国的に下火の銭湯ですが地方の都市でも1つ2つは残ってることが多く、階段巡りで疲れた体を銭湯で癒やす瞬間は最高です。何より階段や路地を見て、お弁当屋さんで買ったお弁当を食べ、銭湯に入ることで全身がその街に染まっていくような、街との一体感を感じることができる。その意味では銭湯もまた階段巡りの一環なのです(強引)。

前置きが長くなりましたがそれではスタート。これが2018年現在営業中の長崎市の全銭湯です。

1. 西山湯


もうこれはいきなりビーンボールがきた、という銭湯。まず店主の体調の関係らしいですが火木土の週に3日しか開いてない。行けるときに行くしかない。というわけで初日にきました。

一見本当に営業してるの?というような入り口ですがこれくらいは序の口。銭湯に慣れればどんな見た目でも「よっ!やってる?」と常連顔して入っていけるようになります。

しかし入っていった瞬間にいきなり番台の店主に「お金を追うことは悪くない。でもそれだけを追っちゃあいかんですよ。だから少子化になるんです」と少子化について話されるとは思わなかった。入店時にこんなに困惑した銭湯は初めてです。ちなみに脱衣中、入浴中(に聞こえてくる)、湯上がりと20回以上同じ話を聞きました


そして浴槽は小ぶりなものが一つ。清掃はなされていて不潔な感じはしませんね。ただちょい温湯(ぬるゆ)。そして時間帯によるんでしょうが(と信じたい)循環していません。うおーん。


まずは体を洗おうと木製の椅子に腰掛け木製のたらいに湯をためるとダバー。めっちゃ漏ります。あれ?おかしいな?と思い別のを持ってきてもう一度お湯を入れるとダバー。あれあれ?もうひとつは…ダバー。ああ、そういう系ね。わかりました(目を泳がせながら)。

そしてゆっくり湯に浸かり、コンクリートの天井を眺めながら本日の階段を振り返り…たいけどもう俺の心は西山湯に全部塗り替えられました。西山湯、最高です


正直かなりクセのある銭湯なので銭湯初心者にはお薦めしません。初心者がいくとがっかり、いや怒ってしまう可能性も否定できない。そしてそういう声を聞いたら俺はとても悲しい。しかしあなたが銭湯は40、50は行っている、中々の銭湯もあった、と自負しているならぜひ行ってください。西山湯はあなたを待っています。

このあと10日間の間になんとかもう一度訪問したかったんですが曜日が合わず再訪なりませんでした。それが今回の長崎の旅で最も心残りなことです。

2. 白菊湯


昨日の西山湯の近くにある銭湯。西山湯は大きな街道沿いにあるので(行ったことはなくても)存在は地元民に認識されているようですが白菊湯は住宅街の奥まった場所にあるので地元の人でも知らない人が多いでしょう。

ここの最大の特徴は18時30分に閉店という店じまいの早さ。18時30分てまだ外明るいですよ。かといって開けるのが早いかというと14時なのでそんなに早くもない(ウェブの情報だと15時とあるが店頭には14時からと貼ってあった)。ここに来るためには観光を早めに切り上げ、入浴してから晩御飯を食べるというプランになるので恋人と来るときは調整が必要ですね。そんなカップルいるのか知らんけど。


中は存分に激渋な作りでいやーもうたまりませんね。町中の秘湯を楽しみたいなら白菊湯はお薦めです。

3. 徳乃湯


駅からけっこう距離のある銭湯ですが近くに浦上教会があるのでその観光と合わせてきてもいいかもしれない。また、バスを使ってもいいと思います。


民家の隙間にスポッとはまったような店構えで中が想像しにくい感じ。フロント形式を採用していておそらく平成初期あたりに改装したのではないでしょうか。しかしモダンかといえばそんなこともなく、脱衣場からロッカーの裏側に回るとうっかり裸のままロビーに出てしまう作りで油断大敵です。


お風呂も素敵だったんですが番台の女将さんがとても面白い方でした。また子供から老人まで万遍なく多くのお客さんがきていて地元に愛されてるなーと感じられる銭湯でした。

4. 高崎湯


茂木びわで有名な茂木は大きくない漁港なんですがなんと銭湯が2軒あります。茂木に泊まった日には高崎湯に来ました。見た目はプレハブの倉庫っぽい感じで、中もサウナやジャグジーがあり多分過去20年以内に大きな改装をしたんじゃないでしょうか。長崎駅からバスで30分の場所にあるここが長崎市の銭湯の中で最もモダンな銭湯というのも面白い話です。


中央にある大きな浴槽が2つに分かれていて片方はかなり熱湯(あつゆ)ですがもう一方はほどほどなのでこっちなら誰でも入れそう。

関係ないですがこの日午前中は野母という漁港にいっていてそこのバス停にいたお婆ちゃん達が話していた長崎弁がまったく聞き取れずほえーっと思っていたんですが、この銭湯にいた自分と同世代または年下の男性たちが話してる言葉もまったくわからなかった。この年代でもそんな方言話す?と思ったんですが、どうやら近くの旅館?で働いているタイの人たちだったようですw お婆ちゃんの言葉は正直それくらいの勢いでわかりませんでした。

5. 日栄湯


オランダ坂の降りる方にある超激渋銭湯。激渋度合いでいったら日本有数であり、もはやここ行かなかったら長崎行ったことにならないんじゃね?とすら思う(個人の感想です)。日栄湯は滞在中唯一2回行って、両日とも雨に降られて全身ずぶ濡れ状態だったのだけど、そんなときに入る銭湯がこれってどうよ。もう脳から変な汁が出てるのがわかった。


浴場でお父さんが女湯のお母さんにもう上がるか聞いている。女湯に話しかけるのっていいですよね。憧れです。誰か女性の方付き合ってくれませんか。伝説の壁越え石鹸パスを見たかったがさすがにそれはなかった。


駅から数分で、オランダ坂の近くで、ひたすらに激渋。地元の人にとっても銭湯といえば日栄湯が一番知名度が高いようですが、ここは本当にお薦めです。

番外 ゲストハウス・ライフテラス


この日は銭湯ではなくライフテラスの運営するゲストハウスのお風呂に入りました。ゲストハウスってたいていシャワーなんですがここは戸建ての一棟貸しなので浴槽があるのです。リフォームされた自動風呂ですがステンレスの浴槽が光ります。広いゲストハウスに一人なので寂しくてiPhoneから長崎の音楽を流し歌いながら入浴しました。長崎 長崎 南の町よ〜


6. 大平温泉


店頭の看板は大平ゆという表記でどちらが正しいかわかりませんがどちらでもいいのかもしれません。自分はバスを使いましたが長崎駅からでも徒歩20分弱なので歩いてでもいいかも。


長崎唯一のビル銭湯ですが無機質なところはなく優しい女将さんが気を遣ってくれ、とても気持ちよく入浴できた。また、長崎の銭湯事情についてもいろいろお話を伺いました。


殿と尻はかならず洗う事」という注意書きの殿という言い方を初めてみたので興味深かった。女湯はなんて書いてあるんだろう。やはりかな?


出ると入り口の通路が常連客の居酒屋状態になっていた。今回は時間なかったのだけど、次行ったらあの飲みに参加してみたいなー。

7. 小田湯


茂木港のもう一つの銭湯。ここもやってるのかやってないのかわかりにくいところですねー。よっ、やってる?


迎えてくれたのは話好きな店主。どこから来たの?と聞かれ東京からと答えると銭湯好きなの?なんで?へーと話が止まりません。Twitterの銭湯好きで有名な某氏のお話をお聞かせいただきましたw 毎年来てるらしい。関西から茂木まで… 話を聞くのは面白いんですがせっかくなら他にお客さんがいない間に写真撮らせてもらおうとお願いすると中の案内までしてもらえました。天井の明り取りが自慢だそうです。どこらへんが自慢なのかはよくわかりません


この日は端午の節句で菖蒲湯でした。この銭湯で菖蒲湯に入れるなんて俺はなんて果報者なんだ。


日栄湯のような渋さじゃないし、どこがいいの?と言われると非常に答えづらい。でも俺は小田湯が大好きです。茂木港自体いいところなのでぜひ観光で茂木にきて、小田湯に入ってもらいたいですね。茂木から長崎へ戻るバスはけっこう遅くまであるので長崎に宿を取っている人でも気軽にいけますよ。

8. 池島港浴場


ここは長崎市ではないので別枠なんですが、西海市の沖にある池島は軍艦島と同じく炭鉱で栄えた島で、池島炭鉱は日本で最後まで稼働していた炭鉱です。多分行政的な支援の関係でこの島には現在でも共同浴場が2軒あるのです。ちなみに軍艦島の横にある高島は古い共同浴場はないですが新しく温泉施設が作られている。

池島には佐世保港、瀬戸港、神浦港と3本の航路があり特に瀬戸港からは本数が出ているので晴れていればアクセスはそこまで悪くないです。ですが俺が行ったとき最初のトライは荒天で船が全便欠航し失敗、翌日のトライはフェリーは出ているけど帰りのフライトに間に合う小型船が欠航のため飛行機キャンセルして翌日休みを取り池島に行きました。ここに行けなかったら今回の旅は失敗とまでは言わないものの悔いが残る。ましてや島の共同湯なんて正直いつ営業が終了するかわかりません。次長崎来るときにはもうやってないかもしれない。そんなことになったらこの旅どころではない。人生に悔いが残ります。それと比べたら1日休みを延長するくらいなんてことはない。


共同浴場の口開けは16時なのでそれまで島を見て回ります。意外に階段があって驚いた。これで階段巡りのついでに池島の共同湯にいったと言い訳ができます。


そして念願の池島港浴場!歩いてたら16時ちょうどに間に合わず、開店を待ってた(おそらく)元炭鉱マン達が数名先に入浴されていました。せっかくだから写真撮りたかったけどこれは無理かなーと思ってたらこの島の方たちはかなりの早上がりで、自分が体を洗っているともう上がり始めました。自分よりあとに入った方もいらっしゃったんだけど俺が上がって体を拭いてるともうあがってきた。おかげで番台さんにお願いし写真を撮らせてもらうことができました。

炭鉱マンの汗を流し、歴史を染み込ませてきた共同浴場に入ることができて本当によかっった。このあと長崎駅に向かうバスを途中下車してギリギリ名古屋行きの夜行バスに乗り換え、東京へ帰ることになったんですが、そんなことはまったく苦にならないくらい幸せな旅、銭湯巡り、階段巡りだった。


長崎県には佐世保にも銭湯があるし島原の共同湯も行きたいし池島東浴場があるしこれで終了というわけではないんですが、まずは長崎市のすべての銭湯と池島の共同浴場に行けたことを本当に嬉しく思います。

長崎の銭湯、最高です!!


階段と銭湯という奇跡のコラボだけど残念ながら数年前に廃業した丸金湯。

Wednesday, April 11, 2018

2018-04-14 西新宿〜東中野〜高田馬場 階段ミート

今週の土曜日、4月14日に階段ミートを開催します。

西新宿に未踏の大きな階段を発見したのでそれを見るついでに、久しぶりに東中野あたりの階段も巡ろうという目論見。

神田川沿いはけっこう高低差が大きく、数は多くないものの大物階段が意外にある階段穴場スポットです。

ぜひお気軽に遊びに来て下さい。

集合時間 12:00
集合場所 新宿中央公園 ナイアガラの滝前



雨天決行
3、4時間歩くのでスニーカー推奨

明確な参加連絡は不要ですがあれば喜びます。
何かあれば以下に連絡下さい。
Twitter @kaidanmeguri
Instagram kaidanmeguri
Gmail syntaxsystem+kaidan@gmail.com
参加するつもりだったけど遅れそう、といった場合も連絡ください。

高田馬場まで歩いたら一度解散、それからどっかお店入って懇親会します。

その他不明な事があればお気軽にご質問ください。

Sunday, March 4, 2018

2017-09-02 群馬 沼田 草津温泉

朝早い電車で沼田駅までやってきた。新宿からのバスもあるが、それだと沼田IC下車になるので沼田駅まで遠い。沼田の河岸段丘をじっくりと見たいならそれもありだが自分の場合河岸段丘はほどほどなので沼田駅が便利。

駅前にはいきなり「日本一有名な河岸段丘」のノボリが。大きさとして日本一なのはおそらく津南町の河岸段丘だけど、「日本一有名な」と曖昧なところで勝負してくる。後ろにはすでに河岸段丘が見えている。多摩川の河岸段丘である国分寺崖線と比べると段差が圧倒的だ。

さっそく河岸段丘の上に登り沼田駅方面を眺める。沼田は駅前も多少商店街があるがメインの市街地は段丘上にある。ただ段丘の上の面が広く、「塙」のような尖った地形にはなっていない。

正面に見えるのは子持山。なかなかかっこいい山容で登ってみたくなる。

アオダイショウくんがいました。体長1mちょっとなのでアオダイショウとしてはまだまだ小ぶり。アオダイショウは匂いがつくのであまり素手で捕まえるのはおすすめしない。ただ彼はあまり臭くなかった。

沼田で一番見たかった階段が見えてきた。地図上では階段になってるんだけど、ストリートビューでみてもどういう構造になってるのかよくわからなかった。もしかしてあんま面白いものじゃないかもなーと思ってきてみたんだけど。

なんですかこれは!!


うおおおおおおお

屋根はトタンなんだけどそれを支える柱や内側はすべて木製で、大きくねじれながら下に降りていく芸術的な構造物。雪が降ったときに階段で転ばないように屋根を付けるのは群馬に多い建築なんだけど、この規模、形状のものはおそらく他にないだろう。白く塗られた木材が非常に美しい。ナガシマスパーランドに木製コースターのホワイトサイクロンというものがあるけど、これは沼田のホワイトサイクロンだ。こんないいものをタダで見せてもらっていいのだろうか。いや金取られたらいやだけど。


下の外からみるとこんな感じ。これだと中があんなすごいことになってるとはわからないね。しかしこれは本当に木造建築美の極致だと思うのでもう少し取り上げられてもいいと思う。


休日でちょうどSLが沼田を通過する時間だったので段丘の上からSLを見た。数分もすると石炭の匂いが風で運ばれてくる。実にのどかな風景だけど、この10分後に乗る電車が沼田駅に到着するのでめっちゃ急いで駅に戻った。

駅前のデイリーヤマザキ内には休憩コーナーがあってストーブに飲食席があり、高校生が注文したうどんを食べていた。この他のコンビニにはない地元の商店感がデイリーヤマザキの素敵なところ。

沼田から一度渋川駅まで戻り渋川で吾妻線に乗り換え、中之条駅を目指す。

中之条はちょうどお祭りの日で屋台がいっぱい出てて神輿もあった。


正面に見えるのは榛名山。榛名山はカルデラ湖を持つ火山なので横からみるとギザギザしてるけど、カルデラを作る噴火の前はあそこにどーんと巨大な独立峰があったのだろうか。

中之条駅前に意味不明な写真がいっぱい展示してあったんだけど、あとで調べたところによると中之条ビエンナーレという芸術祭の一環だったようだ。なんの説明もなかったので知らずに出くわすと恐怖を覚える。

中之条の次は長野原草津口駅で下車して徒歩で草津温泉を目指す。左に見える鉄橋は太子線の遺構。吾妻線から草津温泉まで歩くなら群馬大津駅で降りて日本ロマンチック街道を行くほうが早いと思うけど、車通りが多いし途中に集落が少ないので、あえて六合経由でいくことにした。

うっかり水を切らしてしまい自販機がない区間で、道端の斜面から水が滴り落ちていたのでこれで喉を潤す。

赤岩集落。

木造の家や土蔵が多くめっちゃ雰囲気のある集落だった。農家民宿もあったし、知る人ぞ知るって場所なのかもしれない。集落内に温泉もあるし。

 太子駅跡。
鉱石を運搬車に入れるためのホッパー。鉱山関係の廃墟ではよく見かける。

段々暗くなってきた。軽トラのおじちゃんがどこまで行くの?と話しかけてきた。方向が一緒だったら送ってくれるつもりだったんだろう。しかし自分はここから草津温泉にいくというと「歩きだと4時間くらいかかるんじゃないかなー」と言っていたが、実際には2時間弱であった。地元の人はだいたい車でしか移動しないから徒歩での時間感覚がない。徒歩旅をしてるときのあるあるだ。

あとこのおじさんあとからまたやってきて「さっき六合郵便局のこと「ろくごう」っていったけど「ろくごう」じゃなくて「くに」だから」と教えてくれた。しかし自分は「郵便局のところで曲がります」と言っただけでそもそも「六合」という地名を認識していなかったんだけどな…w

そして1時間半ほど歩いて20時前に草津温泉のハズレにあるキャンプ場に到着。テントを張って早速草津温泉の共同湯に向かう。


いやー草津温泉て初めてなんだけど鄙びた温泉ばっかり見てきたのでこれはカルチャーショックだった。温泉というよりこれはもうエンターテイメント、レジャーランドだよね。特にこちとらテントを背負って数時間かけて歩いてきてこんなところに出たら、もう桃源郷に迷い込んだ気分だw

草津温泉の共同湯は無料なので熱い湯に浸かって疲れた体を癒やし、テントで気持ちよく就寝。